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その時、突如として響いた轟音が、静寂を切り裂いた。
酒の抜け切らないまま夢うつつな私は、吃驚仰天、腰を抜かしかけた。
傍らの草むらに閃光が走ったのだ。
雷かと思い空を見上げるも、漆黒の空に点々と星が輝くばかりで雲一つ見当たらない。
隕石でも落ちたのか、それとも宇宙人の類いか。いや、それは流石にないだろう、と冷静に頭は働いた。あまりの驚きに酔いも冷めたみたいだった。
じゃあなにか、と身を乗り出し草むらの中を覗き込むと、私は眉をひそめることとなる。
「君は俺を見て首を傾げたね」
そりゃ首も傾げたくなる。
なんせまだ若い男が、草むらの中でキョロキョロしながら、三輪車に跨がっていたのだから。
三輪車といっても幼児用玩具のではなく、三輪自転車とでも言おうか。後輪二つがやけにでかく、今までにあまり見たことのないデザイン。
こんなところで一人花火でもしていたのかと私は怪訝に思った。
「君の第一声は、『アンタ何者?』だった」
まったくそのとおりだった。
彼はその問いには答えずに、私によくわからない質問を重ねた。
「あの時君に出会えてよかった」
そんな不思議な出会いから数日、すぐに同棲を始めた。
その他にも彼はよく覚えていた。私と彼の二ヶ月間を。
私にとっても彼にとっても、大切な二ヶ月で幸せな二ヶ月だったはず。
「なのに別れなきゃいけないの?」
彼は押し黙り、目を伏せた。
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