100万キロは遠すぎる

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「ちょっと待ってよ」  私が二の句を継ぐ前に彼は言葉を紡いだ。 「俺たちは結ばれない、いや、結ばれてはいけない運命なんだ」  運命とか安っぽいこと言って誤魔化すな。 「じゃあ何? 私たちどうしようもなくその運命とやらに引き裂かれるの?」   「それ以外に道はない」  ふざけるな。腑抜け。  何が道か。なんとかしろ。  ふつふつと沸き上がる情熱。いや、もはや憤怒の炎。なんだかむしゃくしゃしてならない。  意地ともとれるこの感情を、どうしよう。決まっている。全てぶつけろ。無論彼に。   「アンタの前に道はない。アンタの後ろに道は出来る!」    高村光太郎の言葉を借りて私は叫んだ。   「運命だか道だか知らないけどね、そんなもんなんとでもしなさいよ!  道が無いなら、草かき分けてでも自分で作るっていう気概は無いの!?」  私の大声に周りの客も店員さんも目を丸くする。     「アンタの後ろなら黙ってついていくわよ!」      私は大声を上げながら立ち上がっていた。  シーンとした静けさが店内に流れる。ざわざわと木々の葉が揺れる音までも聞こえてくる。    それからパチパチという音が重なり合って大喝采。店の中の私と彼以外の全ての人が、朗らかな笑みをたたえ私に拍手を送っていた。  私は我に返るのと同時に突然恥ずかしくなり、自分の顔が赤くなるのを感じた。  慌てて椅子に座り、小さくなってアイスコーヒーを飲んだ。  
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