100万キロは遠すぎる

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   彼はというと目を大きくして瞬きを繰り返している。そしておもむろに口を開いた。   「……そうだな。運命ってやつに従う必要なんてないよな。逆らってみよう、二人で。  道は、俺が作るから、ついてきてくれるかい?」    まったく馬鹿な質問しないでほしい。答えなんてとうに決まってるんだ。  みんなから好かれることは簡単ではない。でもそんな必要はないんだ。そのほんの六十億分の一でいい。  彼に愛されれば私は幸せなのだ。  私は当然という顔をして口を開いた。    その時だった。    反射的に耳を覆ってしまうような、轟音が響いた。  普段私生活じゃ聞くことのない大音量。いったい何デシベルだ。  そしてそれと共に走る閃光。目眩ましでもされたかってぐらい眩しくて光に背を向けた。    隣にいた彼も何が起こったかわからないといった様子で、ただ耳を押さえ丸くなっていた。きっと店内の誰もがそうしていたことだろう。    そんな中私は思っていた。これは彼と出会った時と同じじゃないかしら?    光と音はほぼ同時におさまり、皆一様に事態の把握に勤める。  まだ視界に強烈な光が残っていて、はっきりと見えない。腕で瞼をこするようにしてやっと見えたのは、それは不思議な光景だった。    
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