プロローグ

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 吸血鬼はいるか?  そう聞かれたら俺は迷わず首を横に振るだろうね。  血を吸えば力を得るだとか、永久に死なないとか、ニンニクが苦手だとか、まあニンニクはくさいけど、あり得ないって。  でもさ、いたらいたで面白くね?  それに血を吸われたら、自身も吸血鬼になって不死身な身体を手に入れるんだぜ?  と、矛盾だらけの思想を抱き、俺は今、自転車をひきながら長い坂をのぼっている。  今日は入学式&始業式だ。  めんどくさい行事を1日でまとめてやってしまおう、というこの高校の心意気には感嘆の拍手を送らざるを得ないが、授業のない日が1日減ったとなると、ちょっとした怒りも込み上げてきた。  ――さてここで、もともとずれていなかった、むしろちゃんとしたレールを走っていた話を無理やり脱線させよう。  俺がなぜいきなり『吸血鬼』について、下らない脳内論争を繰り広げていたのか。  それは、坂下の電気屋のテレビで吸血鬼特集が放送されていたからである。  なんと影響されやすいのだろうな、俺は。  ま、事実、俺はかつてテレビで活躍するヒーロー戦隊に憧れていたし、友達がドラムを叩いていた姿に感化され、使いもしない電子ドラムを購入したりした。  優しい大人になろうと落ちていた五円を交番に届けた事さえある。  そんな些細な事象も全て今の俺を構成してるんだな、とか思っているうちに、校門の前に到着した。
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