🔔ぷかぷか

🔔僕はお魚

海底はなぜか温かで、ゆらゆらゆりかごに乗ってる見たい。

海の底でゆらゆら揺れる地面を目指す。

地面は、ひきりなしに温かい息吹を吐き出し僕を包んだ。
ふくちゃんは気にした様子もなくその合間をぬって泳いで行く。

地面から吹き出す温かい噴水にふくちゃんの体がぷにょぷにょに歪んでる。

「待ってよ」
慌てたせいで温かい吐息に突っ込み、世界が歪んで掻き回された。

体を包む懐かしい温かさ。

ぷかぷか漂い流されながらふっと見ると、見た事のない大きなお家が目の前をふさいでいた。
凄い、こんな所あったんだ。

目を輝かせていると、いつの間にかふくちゃんが隣りに来て囁く。

「沈没船だよ」
まだ見ぬ沈没船の中に期待が膨らむ。

「凄い、ふくちゃんのお家？」

「僕のって訳じゃないけどみんなここで暮らしてるよ」

沈没船。
かっこいい。

「僕も入っていいの？」

「うん特別に入れてあげるよ」
胸をそらして自慢顔のふくちゃんは、もう目に入ってなかった。

ただ目の前にそびえ立つ沈没船の大きさに。

その雄大さに目を奪われ。

心を奪われた。