🔔ぷかぷか

🚢沈没船

勢い良くぶつかったつもりが、少し口を開いた箱の口にスッポッリくわえ込まれていた。

体が挟まって身動きが取れない。
箱の口から出た尻尾をむちゃくちゃに振り回す。

箱の口はよけいにくわえた力を増し放そうとしなかった。

す～す～

諦めかけた時、暗い箱の底からなにか聞こえた気がして、
暗い箱の底に目をやった。

透明な青い闇に溶けるように、さらに青い青い石があるのに気付く。

その石の中から気泡が生まれ、シャボン玉のように闇夜に浮かびあがってきた。

目の前を通り過ぎて暗闇に消えいる。

だんだん目がなれてくると、その青い石の周りを包み込むようにして丸まって眠る魚が。

ピンクの体が微かに上下して、時たま寝ぼけたように口から小さい気泡を吐き出していた。

気持ちよさそうに眠るその子は、いままで見たどの子よりも綺麗な色をしている。

ぽかんと開いた自分の口から空気の玉が夜空に舞い上がった。

それで我にかえりおずおず話しかけて見る。

「ピンクの君なにしてるの？」

「ピンクの君」

それに反応して体がピクリと動く。

寝ぼけたようにこちらを仰ぎ見たピンクは、頭だけ箱の中に出した僕を見て、びっくりしたように飛の角で頭を打った。

その振動で箱が揺れる。

わっわっ～

バランスを取ろうとむやみに動く。
反動で体がスッポッリ抜けて箱の中に収まった。

「大丈夫？」

箱の隅で固まったピンクの魚は、恐る恐る僕を見上げてつぶやく。

『誰？』

こわごわと尋ねてきた。

「僕。僕は・・」

言いかけて言葉がつまる。

僕は誰？

色黒だから黒でいいかな。

「僕はクロだよ」