プーフ

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天まで届け我が髪よ。 どのシャンデリアより輝ける どの天井画より美しい どの建築よりも空に近い そんな髪型が我が気分。     「そうね、私は顔が頭と体の真ん中にあるのが一番素敵な状態だと思うの。 ねえ、床屋さん。 あなたにならできるでしょ? どうにかしてよ!」   ほっそりとした首の婦人は言った。 その婦人はまるでヘーペーのようだった。 肌はけして白粉まみれの偽物ではなく、つるりと光りを放つ茹でた卵のようである。 その婦人は間違いなく美しかった。 しかし彼女の憧れはフランス王妃。 自分の美しさを解ろうとはしない。   「王妃様はね、帆船をのせたそうよ。 ねえ、どうか私にも王妃様のようなアイデアをちょうだいよ! 王妃様のような、可憐な乙女になりたいの。 ねえ、床屋さん? あなたにならできるでしょ? どうにかしてよ!」     とは言うものの 花瓶に水入れそして乗せ 飾りを巻き付けそして止め クッション仕込んでさあ隠し 髪の毛を上げ更に上げ 梯を使いまだ飾る 上には上が、まだ上が 天井は遠いさて遠い。       「さあ、できたよ、お嬢さん!」         ずっとずっと結い上げて 天井にやっとついた髪。 婦人の笑顔が見たいため、床屋が頑張り上げた髪。 ただ美しくなるがため、婦人が耐えた長い時。     「お嬢さん?」       首が折れては意味がない! ああまったくだ、まったくだ。 美人になるのも、ほどほどに。
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