世俗カンタータ

1/1
前へ
/7ページ
次へ

世俗カンタータ

窓から注ぎ込む光を浴びて、私は思索する。 やわらかな黒髪の、青いあなた…やっと手に入れたと思えば、違うほうをむいているあなた… あなたは毎週日曜日になれば、ここへやってくる。 そして、私の話に熱心に耳を傾け、時に涙し、時に微笑む。 ああ! 罪深き欲求。 あなたの美しい髪に触れたい。 あなたと見つめ合いたい。 あなたの背中を抱きたい。 その薄っぺらな胸の、鼓動をこの耳に聞ければ! 頬をそっと撫でてみたい。 形のよい唇… その吐息を止めてしまいたい… あなたは私の子供を産むのだ! 白い足をつつむ黒い靴、ああ、私はその黒い靴になりたい。 彫刻のような美貌、あなたを彫った、偉大なる両親に幸あれ。 今日は日曜日である。 例によって、あなたは私の住まいにやってきたー私の話を聞くために。 静かなのに、やけに騒々しく思われる、あなたの仲間たちが出て行けば、壮麗な光のなか、私たちは二人きりになれるのだ。 「ずっとあなたを見ていました。 たとえあなたが何であっても構わない! 抱きしめたい、あの書物はうそつきだ、私はあなたがいれば幸福なのだから… 」 私がその細い肩にふれたとき、あなたは震えていた… 怯えるその瞳、可憐なあなた、その姿をみる快楽、もう立ち止まることはできない…ー 「好きだ、愛している、あなたがここに来る限り、私がここにいる限り、私の思いは遂げられない。 どうか二人で出て行こう。 あのゴンドラで、相思相愛の夫婦となるのだ! あなたは私を信用している、信用とは愛なのだ、抱かせておくれ、なんと、かぐわしい…」 あなたはやっと心を開き、私をとろけた眼差しで見た。 真面目で、ご立派なあなたと、真面目で、ご立派な私。 なんと素晴らしい二人だろう! 『法衣なんて早く脱いでしまって? 愛しい私の親父さま、私が、あなたのマリア様になるわ』 ステンドグラスの光が、白い肌を青く照らし出していた… 我が胸に十字架のある限り、愛し合う我々は罪人なのである。 「この罪が許されますように…」 アーメン
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

36人が本棚に入れています
本棚に追加