死線

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     混沌としている。赤い血やら、肉片やら、臓物やらがあちこちで飛び散り、断末魔の叫びと悪魔のような怒声が鳴り響く。人々が次々と倒れ、地面が赤く蟠った。男は混沌とした戦場で戦いながら、まるでそれを地獄絵図そのものだと思った。    突如、耳を劈くような金属音が鳴った。二つの剣の刃が重なり、鍔迫り合いの体勢となる。瞬時、男は剣に力を込め、向かってきた兵ごと押し返す。バランスを崩し、仰け反る敵兵。その間にして薙いだ。敵兵の首が飛ぶ。残された体は、力なく倒れ、地面に赤い肉塊が横たわった。   (これで、何十何人目だ?)    男は自問自答する。当然、答えは出てくるわけがなかった。数えるには殺しすぎたし、この戦いを終わらせるには少なすぎる。    休む間もなく、敵兵が来る。隊列を成して統制された動きをするその者達は、まるでそれ一つが大きな化け物となって動いているようだと思った。    その巨大な化け物を目の当たりにして恐怖に身が震えたが、屈するほどではなかった。男は立ち向かう。同じ志を持つ、数百数十数人の勇敢な仲間達と共に。   
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