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敵兵の血で染めた剣を持ち、高らかに唸りを上げて走る。その整列した敵の陣を掻き乱してやるように、飛び込んだ。
最初の一人は飛び込んだときに、剣を喉に突き刺し、二人目は、剣を引き抜きながら柄の部分で首を殴り、三人目は腹を薙いで殺した。
武術なら負けたことがなかった。武術ならいくらでも勝てる自身があった。
全てがゆっくりと、全てが男の動きに合わさっているように見える。
右から来れば、左に流し、左から来れば、右に流す。片手で剣を縦横無尽に振るい、周りにいる敵を斬り払う。
もう夢中だった。心を無にして、戦いだけに精神を集中させた。
腕はがむしゃらに人という人を斬り続けた。
(いつのことだったろう。俺が武術を身に付け始めたのは……。生まれた時からかな?)
最も、そんなことは実際には無いが、それほどまでに武術との付き合いは長かった。
男に両親はもういなかった。幼い時に両親を失くし、物心付いた時から一人だった。子供の時の自分は、生きる為に必死だったのをよく覚えている。生きる為なら、何だって盗みにいけたし、人を殺すのも躊躇わなかった。
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