死線

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   それで逆に殺されれば、それまでだと諦めも付いていた。    そんなある時にあの男と出遭った。いつものように暗い山道に潜んで、荷物を背負った商人を襲撃した時だった。    商人かと思って油断した自分が浅はかだった。その商人は咄嗟に迷うことなく背負っていた荷物を捨て、腰に携えた剣を引き抜いたのである。その男は商人ではなかったのだ。商人の格好をした武人だった。    恐らく、荷物を盗まれて困り果てた商人やら役人やらが、雇ったのだと思った。そして、まだ幼く非力だった自分は、難なく武器を奪われた挙句、縄で縛られてしまった。    武人に捕らえられ、自分はとうとう殺されると思った。いや、今まで何とか生きてこられた方が不思議だったのだ。いつこうなるか分からない中、よく自分はここまで生き長らえたなと思った。もう未練はなかった。幼くして死を覚悟した時だった。    縄が解かれた。  いきなりの開放に男は戸惑った。武人は何がおかしいのか、微笑んできた。そして、持っていた干し肉を自分にくれたのである。    人から何かを恵んでもらうのは初めてだった。盗もうとしていたものが、盗むことなく手に入ってしまって不思議な気持ちだった。
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