初夏

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夜更けの忍里に、二つの影が降りた。     「うっは!焦げ臭ッ」   立ち込める煙を払い、郁は鼻を摘まみながら眉をよせる。     「…遅かったか、」   その横で、零は焼け落ちた民家を眺めた。     「生きてる奴はいるのかねぇ?」   「見に行くよ」   零は言った。 そして郁は…   「え…やだよ。熱いじゃん」   「お前それでも忍か」   拒否した。   「いいえ!信長サマの駒よ!」   「ど っ ち も い っ し ょ だ。…ほら、行くよ」   煙の中に消えていく零を、郁は足早に追い掛けた。        
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