23人が本棚に入れています
本棚に追加
だからと言って、全開にした窓から覗き見る事の出来る店内にも、
「暑い…」
と、カウンターに突っ伏する青年以外に、誰もいなかった。
黒髪、中肉中背。特徴らしい特徴と言えば、青年の掛けているフチなし眼鏡くらいだが、それも珍しいモノでもない。
そんな、本当に、ごく普通の青年。
胸に『ナチュラル』と書かれた、緑色のエプロンをしていなければ、客だと思われてもおかしくない。
つまりは、お客は、ゼロだ。
「今日も、いつも通り暇だな。こんな店じゃ、しょうがないか」
青年は、苦笑しながら呟くと、店内を見回した。
ただでさえ人が少ない田舎町の、さらに町外れに位置するという悪立地に加えて、店唯一の冷房機器は、扇風機。
青年が来てから、窓は全開。扇風機を「強風」にして、風を送り続けているが、お世話にも涼しいとは言えない店内に寄り付こうと思う客も珍しい。
最初のコメントを投稿しよう!