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「さっ、目を閉じて。痛くないからね」
ハリーくんは最後の針の注射を……
患者にしました。
患者はみるみる元気になり、顔色がよくなりました。
それを見て、ハリーくんは優しい笑顔を向けると、ゆっくりと眠るように目を閉じ、ふわふわと空へ浮かび始めました。
みんな、泣き喚いています。
まるで、地が唸りをあげるように。
と、その時、ガニニくんが言いました。
「みんな! ハリーくんを追いかけよう!」
しかし、みんな戸惑っています。
それは光りを恐れているから。
「みんな! 怖がってちゃだめだよ! 死ぬのが怖いハリーくんは、それを関係なく、みんなの病気を治してくれたじゃないか! 僕たちは何も恩返しをしてない! ならせめて! ハリーくんと僕らみんなの願いだった、光りを見に行こう!」
ガニニくんの言葉にみんな心を打たれ、一斉に浮かんでゆくハリーくんを追いかけました。
海面に近づくにつれ、明るさが増してきます。
「みんな! 目を閉じちゃダメだ! みんなが望んだ光りを見るんだ!」
ガニニくんの言葉は、みんなを奮い立たせます。
そして、ついに、みんなは水の中から顔を出しました。
みんなは安らかに眠るハリーくんの周りをぐるぐる回ります。
空からは朝の光りがハリーくんやみんなを歓迎するかのように、照らしだしていました。
最後にガニニくんは言いました。
「本当の僕たちの光りは、僕たちに光りを見せてくれるっていった、お医者さまのハリーくん自身だったんだね」
そのとき、ガニニくんにはハリーくんが一瞬笑ったように見えました。
《おしまい》
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