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――ざわめく木々の音。風の悪戯か。
――それとも――……
目が開いたのは直後だった。周囲の気配に突き動かされてのことだ。時を刻む番人が示す時刻は丑三つ時。
直感で、風向きに異変を覚える。こういうときに限って僕の勘は当たるんだ。
先刻手入れを施しておいて良かったと思いながら、傍らの剣に手を伸ばす。それ以上は思考する暇もなく、鞘を腰にくくりつけて腰を上げた。
この邪悪な気配は何処から来てるんだ?
七年間もこんな生活を送ってきたものだから、気配を察知する感覚はしっかり体に染み付いている。
多分これは、嫌と言うほど生死の狭間をさまよわなければ判らないものだろう。
軽く靴のつま先を整えてから、全方位に視線を走らせると、こっちだ、と勘が告げる。すると自然と体が動く。
そうして急ぎ足で駆け付ける途中、自分が向かおうとしている方向から微かに上がる叫び声が耳に届いた。
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