追憶の起点

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「今日はいつもみたいに寝坊しないで来れたんだね。」 「いつもみたいは余計だよ。普段は別にいらない授業だから遅れてるだけ。」 「はいはい、今日はそういうことしておきますよ。」 「今日はじゃなくて…まあいいや。せっかく早く来たんだからさっさと行くぞ。」 そう言って僕は裁判所の中へ向かう。 「あ、ちょっと待ってよ~。」 そして裁判所の中へ   中には他の傍聴人や事件の関係者がすでに入っていて、裁判の開始を待っていた。   「なんかワクワクするね。」 瑞穂も傍聴は始めてらしい。かなり期待してるみたいだ。 「言っとくけど、多分瑞穂が期待してるような感じじゃないよ?」 「それってどんな?」 「裁判は結構形式だけで終わるものが多いんだよ。だから激しい論争みたいのはないの。」 「うそだ~。よくテレビでやってるようなやつじゃないの?」 「あれはテレビ。実際はあんな風にはならないんだよ。」 「なんだ、つまんないの。」 瑞穂は何をしに来たんだか…。   正直言うと僕もドラマみたいのを期待はしてたけど、他の人に話を聞くとそういうのとはかけ離れてるらしい。少し拍子抜けでも、一応勉強に来てるわけだ、仕方ないかな。  
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