追憶の出端

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少し考えた後先生に回答する。 「まず被告人が若い所を見ると、犯行を考えた理由には何か深いものがあると推測できます。例えば以前に、自分の身近な人を殺そうとしていた相手に何か酷いことをされた等。 それがもし情状的に罪を軽減できるものかを訴えれば、刑期の半分まで減らすことが可能かもしれません。あ、殺人未遂だから、本当に同情すべき理由ならば全ての刑を免除することが出来るかもしれませんね。 僕ならその方向で弁護します。」 「ふむ、よろしいでしょう。最初の推測はいつもながらいらないが、判断する方向は正しい。とりあえず座りなさい。」 少し先生が冗談を入れたから教室が少しざわつく。いつもながらは余計なのに…。   「すごいじゃん。ちゃんと答えられるなんて。」 「まあね。」 隣で冗談を言っているのはさっき僕を起こした張本人、島井 瑞穂(シマイミズホ)。 いつも僕をからかっては楽しんでいる少したちの悪いやつ。でも僕たちはいつも一緒にいる。   付き合っているからね。   それと何故こんな授業を受けているのかというと、僕たちが法学部の2年生だから。 瑞穂のお父さんは警察をしていて、確か警視長かなんかでお偉いさんだったと思う。 それの影響もあったのか、瑞穂は検事を目指して法学部に入ったらしい。 僕はというと…、特に何も考えずに入っちゃったな…。 もちろん法律に興味もあったけど、特に目指すものも無かった。 でもここに入ったことで、瑞穂にも会えた。だから今は法学を勉強してて良かったと思える。
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