第八章

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恐らく、東京よりも色が濃いであろう空。 京市は沈み行く眩しい夕陽に目を細めながら、携帯を静かに閉じた。 思いを馳せるのは携帯が繋がらなかった相手。 (学校はもう終わってるはずだよな……。買い物でもしてるのか……?) 緑に囲まれた小さな材木会社の裏手。 従業員の休憩所も兼ねているこの庭は、どこか宇崎家の庭を思い出させる。 (これだけ空気が澄んでると、煙草を吸う気にもなれないな。) 担当者との打ち合わせが終わり、この美しい庭で美味くも無く、不味くも無い缶コーヒーで一息ついていた京市。 律はどうしているのかと思い電話を掛けてみたが、空振りに終わり盛大なため息をついた。 (声を聞きたかったんだが、残念……。) 乙女思考な自分に苦笑する京市の頬を、冷たい風が撫ぜ、身を縮こませる。 「宇崎さん、こちらでしたか。そろそろタクシーが来ますよ。」 「え、ああ、有難う御座います。」 後ろから声を掛けて来たのは、この会社の専務である恰幅の良い男。 長年宇崎組と取引をして来た間柄で、お互いの気心も知れている仲だ。 「おっと失礼、お電話中でしたかな?」 専務は京市が手にしたままの携帯を見て、邪魔をしてしまったかと申し訳無さそうに言った。 「いえ。繋がらなかったので、お気になさらず……。」 京市はいつもとは違い、どこか無防備な表情を見せる。
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