第八章

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初めてベッドで抱かれているせいか、いつもより鼓動が早い気がした。 足の付け根を強く吸われ、シーツを握る手に力が入る。 (……あ、明日体育があるんだった。痕を付けないでって言うの忘れちゃったなぁ……。) まあ、良いかと、諦めのため息をついた時、携帯の着信音が部屋に鳴り響いた。 携帯画面を見なくとも分かるその着信メロディは、京市用に設定したクラシック曲。 誰もが耳にした事のあるその曲は、故郷を懐かしむ気持ちを表したもの。 (何で……こんな時に……。) 自分の行いを責めているかのようなタイミング。 瞳を開け、携帯が入っているカバンを見つめる律は、たまらず泣きそうになる……。 「……京市からか?」 「…………。」 「出たきゃ出て良いぜ。……出れるものならな。」 そう呟き、怜治は律の身体を貫く。 「……っっ!!」 流麗な音は暫く流れ続け、京市が律の声を聞く事は無かった……。
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