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残念そうに答える姿を見て、専務は『おや?』と思う。
「何か心配事でも……?」
「え?」
「いやぁ、そんな感じがしたのですが、違いましたかな?」
余計な事を聞いてしまったかと、ぽりぽりと頭を掻く。
そんな人の良い専務に好感を持っている京市は、ついつい、本音を漏らしてしまった。
「心配と言えば、心配ですね。今、何をしているのやら……。」
遠い地にいる恋人を想い、仕事中、一度も見せた事の無かった柔らかい笑みを浮かべる。
専務は京市にそんな表情をさせる相手は誰なのか気になり、聞いてみた。
「繋がらなかった相手は彼女ですか?」
「……ええ、まあ。」
「ははは、やはりですか。宇崎さんのお相手なら、さぞかし美人さんなんでしょうねぇ。」
何故そう思うのか分からなかった京市だが、本心から思う事を口にした。
「見た目もそうですが、それ以上に心が綺麗な子ですよ。」
「のろけられましたな。もし決まった人がいないのなら、私の娘とお見合いでもと思ったんですがねぇ、残念です。その指輪は本物だったんですね。」
「……はい。」
静かに笑う京市を見て、本当に彼女を愛しているのが専務には伝わった。
寒空の下、真っ赤な太陽の光を受けたシルバーリングは美しく煌めく。
会って。
抱き締めて。
愛の言葉を囁いて。
一緒に眠りに落ちたい気持ちは止まない。
一秒でも早く恋人のもとへ帰れるよう、仕事に精を出す京市だった。
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