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少し距離があったが間違いない。
何故そんな確信を持てたかは分からないが、僕には分かった。
白いブラウスを着た少女は片手を壁に付き、無表情でこちらを見ている。
仮面は、もちろん着けていない。
しばらくの間2人は見つめあっていた。
いや、見つめていたのは僕で、向こうは睨んでいるようにも見える。
(人の表情ってあんな感じなんだな…)
冷静なのか、呑気なのか、そんな事を考えている時だった。
少女は踵を返すように後ろを振り向き、何も言わずにさっさと川上へと歩きだしてしまった。
「……あ、お、おい! 君!」
僕はとっさにそう叫ぶ。
すると、彼女はピタッと立ち止まり、こちらをちらりと見る。
僕は思わず言葉を詰まらせる。
何も言わない僕をじっと見る少女。
とても整った顔立ちだ。
産まれて初めて見た女性の顔だからか?
わからないが、とにかく見惚れてしまう程少女は美しい。
僕はそんな事をぼーっと考えてからふと我にかえり、思い切って少女に歩み寄る。
カバンを掴み、仮面を持ち、バシャバシャと川の中を進む。
少女は意外にもそこに立ち止まったままでいた。
一歩も動かず、ただただこちらを見つめている。
いや、
観察している。
こっちのほうがしっくりくるかもしれない。
そして、そのまま彼女の目の前に立つ。
(…な、何話せばいいんだ?)
そう言えば、まともに女性に惚れた事など今までないことだった。
ましてや初対面で一目惚れだ。
とにかくなにか話さなくてはと、少し焦りながらも取り敢えず話し掛けてみる。
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