第二章

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「…こ、この仮面。お前のだろ? なんでこんなとこで外してんだよ! も、もし誰かに見つかったらどうすんだよ!?」 僕は急に怒鳴り、大きな声を出してしまった。 そんなつもりはなかったのだが…。 しかし、そんな僕の感情とは裏腹に、彼女は全く表情を変えずに話し掛けてきた。 「もうあなたに見つかってしまったわ」 少女の声はとても落ち着きがあり、凛とした響きを持っていた。 「あ、いや…。そうかもしんねえけど…」 「ええ。現にあなたは仮面をしていない私とこうして会話しているわね。 それで、どうするの?」 僕の言葉をさえぎり、淡々とそう話す。 その表情からは何も読み取る事ができない。 「どうする、って?」 少女はまた淡々と話始める。 「私は仮面を外し、この川に流した。その仮面をあなたは見つけて拾い、こうして私に突き出して怒っている。 もちろん、私だってこの行為がどれくらい罪深いか知っているわ。それでも私はその行為をした。 という事は、それにはそれなりの理由があるって事。 お分かり?」 少女は話し終えると、こちらをじっと見つめている。 (…まぁ確かにそうだが) 彼女の言う事は正しいかもしれないが、どんな理由があろうと仮面を外で外すなど常識はずれなんてもんじゃない。 そこまでする理由とはなんだろうか? どうも腑に落ちない。 「…それは分かった。 でも、お前がそこまで分かってんのにこんなことする理由って…」 「初めて会ったあなたにそこまで話す義理は無いわ」 「ぐっ……」 厳しい一言だが、正しい。 (なんなんだ、こいつ。可愛い顔してんのに…) そんな事を考える僕の気持ちを察したのか、彼女が口を開く。 「腑に落ちないって顔してるわね。 まぁ、当然て言えば当然か」 そう言うと彼女は少し考えて込み、僕に語り掛けてくる。 「…いいわ。あなたがどうしても知りたいのなら私について来なさい。ついてくれば全てを教えてあげる。 ただし、全ての物を捨てる覚悟が無いなら今日の事は全て忘れ、いつもの日常に戻るの。  それでも、もし今日の事を公言するような事があれば、その時はあなたを消さなくてはならないけど」 覚悟? 消す? なに言ってんだ?こいつ…。 訳が分からない。 しかし、今のこの退屈な毎日から抜け出せるなら…。 今の状況を変えれるならば…。
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