第一章

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「ーー1950年。両国の首脳会談の際に、ふとしたきっかけが第四次世界大戦の火種となった訳でー…」   「先生ぇー。そのふとしたきっかけってなんですかー?」   「ーーえー、教科書に載っているように、首脳の表情に問題があったんですね。ある説ではA国が仕組んだ計画的な会談だったらしく、その首脳も実はスパイだったらしく……」   いつもの先生のうんちくが始まる。 誰一人としてまともに聞いていないだろう。 そんなこともわからず、先生はたんたんと話を進めていく。   「……で、あるからして、12年間もの間繰り広げられた第四次世界大戦の終戦をきっかけに、1962年に締結されたのが、えー。皆さんももちろん知っているでしょうが『C.F.R(Conceal.Face.Regulation)』つまり、人類は仮面によって素顔を隠し、自分の本当の表情を隠し、常に笑顔でいる。そうすることによって争いを無くすという条令な訳です。この条令が締結して、今年で記念すべき100年目。締結を記念して、終戦日である10月25日には各国で記念祭が行われる訳で、我が国では……」   また先生のうんちくが始まった。     僕はこの学校というものが嫌いだ。 なぜ知りたくもないことをわざわざ学ばなくてはいけないのだろう? 勉強など、個々で勝手にすればいいだろう。   そしてこの教室だ。 30人以上の人間が自分の表情を仮面で隠し、一つの部屋に押し込まれている。   気持ちが悪い。   僕は先生のくだらない話を聞きながら、机につっぷす。   仮面が邪魔だ。
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