第一章

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      学校が終わり、僕は1人で家へと向かう。 人気の無い、川沿いの並木道を歩く。この帰り道だけが唯一、僕が1人になることのできる癒しの時間だ。   誰一人通らない。 聞こえるのは川のせせらぎと、一つ道を挟んだ向こう側にある国道を走る車の走行音だけだ。   並木道の途中にある、川に面した茶色い木製のベンチに腰をかける。 そしてカバンからミュージックプレイヤーを取出し、イヤホンを耳に付ける。 そして物思いにふけ、いろいろな事を考える。 これが僕の日課だ。   僕はある種、変わった人間なのだろう。 自覚はある。 聞く音楽は流行りのポップミュージックでもなく、R&Bのたぐいでもなく、モーツァルトやベートーベンなどの手懸けた、所謂クラシックだ。 普通の高校生はこんなもの、まず聞こうとはしないだろう。 それに、普通の高校生は僕のように川沿いの並木道にあるベンチに腰掛け、老人のように物思いにふける事などしない。 そして、世間に対する考え方だ。 普通の高校生、いや、普通の人は今のこの世界になんら不快感を抱いていない。 抱いていたとしても、 仮面するのめんどくさいな。 なんでこんなのつけるんだろ? 条令破って仮面とっちゃうと犯罪なんだよな。 その程度の事は考えるだろう。 しかし、結局世界の常識に慣れてしまうか、なにかを考えても諦めてしまう。そんなとこだ。   しかし、僕は違う。   ずっとある事を考えている。 この世界にはきっと僕と同じ考え方をしている人間がいて、なんらかの組織があるはずだ。 少し考えればこんな世界、おかしいと思う。   だが、結局のところ僕の妄想でしかない。   そういったレジスタンスの類いは60年程前までは多く組織され、繰り返し紛争が行われていたそうだ。   しかし、今から50年程前。ある事件が起こったらしく、それ以後、レジスタンスと呼ばれる物はパッタリと姿をくらまし、反乱を起こそうとする者も次第に減っていったそうだ。 そして現在に至る。 その事件がどういった事かは公表されていないが、それ以後反乱が無くなったのは事実だ。 なにか重大な事件だったのだろう。 そういった中でレジスタンスなど、組織する者はいないだろう。
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