第二章

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(……なんだ、あれ?)   川にある中洲を眺めている時、それはふと目に入った。 それは川上から流れてきたのだろう。  中洲から生えている背の高い草に引っ掛かり、水面でユラユラと揺れていた。 嫌な予感がする。 僕はまさかとは思い、ベンチから立ち上がりよく目を凝らして見た。 (おい、マジかよ……) 僕の予感は的中していた。 そう、そこに浮いていたのは紛れもなく、誰かの仮面だった。 僕は慌てた。 普通に考えて、 仮面がそこらに落ちている。 なんてことはあり得ない。 いや、あってはいけないのだ。 あの仮面が他の人間に見つかれば、この仮面の持ち主はきっと捕まってしまう。 それに何といっても、その仮面に写る顔はとても美しかったのだ。 僕は仮面を見つけた瞬間、仮面に一目惚れしてしまっていた。 僕はカバンをひっつかみ急いでコンクリートの壁を降り、川に入っていった。 川は上から見るよりは遥かに浅く、脛の程までしかなかった。 制服が濡れるのもかまわず、急いで少女の仮面に走りよった。 僕はおもむろに仮面を手に取る。 近くで見ると、仮面はより美しく見えた。 まだ若いのだろう。 恐らく歳は僕と大して変わらないくらいだ。 少しの間、じっと仮面を眺めていた。 そんな時、川上の方から鳥が羽ばたく音がし、僕ははっと我に返った。 音のした方に、素早く目をやる。 少し川上の方には橋が架かっている。 その橋の下にぽつんと立つ少女がいた。 そう、この仮面の持ち主だ。
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