満月

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ピエロは空を見た 満月だった。ふと見ると 月明かりの下踊るバレリーナ 美しい。 でも時々苦しげな悲しげな顔で踊る 美しいのに何故あんなに苦しげに踊るのだろう あっ! 彼女がつまづいた。みるみる血に染まるトゥシューズ 駆け寄ろうと踏み出そうとした時。 思い出した 化粧を落としたんだ! 踏み出した足が止まった。止まった足を動かせない。 ひたすら遠くから見つめるだけ 悔しい… 月明かりが消える頃彼女も消えた… 踏み出す勇気が無かった自分が悔しい!握った拳が汗で濡れている… また会えるだろうか~ 目に焼き付いた悲しげな美しい人。 あれから忘れられず、月が欠けまた満ちるのを毎日見上げていた… また会いたい… 次の満月の日 そっと夜の闇へ 今度はピエロで向かう 居た! また時々苦しげに踊る美しい人。 あっ! 彼女がつまづいた! 今度はそっと駆け寄って手を差し出す 驚いた彼女の顔 でも今はピエロ。偽りの姿。おどけて彼女の手を取り起こす 今度はムーンライトの下ピエロが踊る 驚いた彼女の顔が少しづつほころび笑顔に変わった 嬉しい 一緒に月明かりが消えるまで踊りつづけた 別れ際彼女が言った「次の満月にまた会えるかしら?」 ピエロはYESの代わりに一輪の花を差し出した 花を受け取り彼女は嬉しそうに消えていった。 ピエロは嬉しかった! けれど今は偽りの姿。 素顔で会っても笑顔を見せてくれるだろうか… ピエロじゃない僕の本来の姿を見ても… 消えかけた月に問いかける 月は答えない 当然だ自分で答えを出さなきゃならない。 次の満月までに 満月までに…
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