3.君の隣

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「誰から聞いたの?」 視線を新聞に戻して話を進めていく。 「直ちゃんのお母さんに帰ってくるとき会ってね。その時に」 「会ったんだ」 「そう!紗夜ちゃんは相変わらずしっかりしてますねぇなんて言われちゃった!」 「あっそう」 呆れたようにため息をつく。 外からは生暖かい風が風鈴を鳴らし部屋の中に吹いてくる。 最近変えたばかりの畳の香りが鼻に入ってくる。 遠くから聞こえる蝉の声に耳を傾け、夏を感じる。 暑いのは嫌いな紗夜だが、季節を感じるものは嫌いではない。 気温は耐えられないほどだが、ふと気づく季節を形作るモノがあるから紗夜は耐えられた。 「蝉が今年も元気ね」 ふふ、と笑った母が机に料理をのせていく。 その光景を見ながら新聞を元の場所に戻して立ち上がる。 「どうしたの?」 「父さんと兄さん呼んでくる」 「ああ、お願い」 柔らかく笑う母に視線を合わすだけして階段へ向かい二階へ上がる。 自分の部屋の前を通り過ぎようとすると、部屋の中からバイブの音が聞こえた。 眉を潜めてドアを開けるとベットの上の携帯が暗い部屋の中で光っていた。 携帯をとると誰からかメールがきていた。 「……直?」 メールは二件。 片方は夕飯前にメールしていた三崎。 もう一件は直からだった。 メールを開くと【明日暇~?】と書いてあった。 帰ってくるときのシリアスな会話は一体何だったのかと思うほど間の抜けた文面。 しかし明日は三崎との先約がある。 明日は用があると返信を打って、携帯をポケットにしまって父と兄の部屋に向かった。
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