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午後4時を回った頃。
紗夜は家の門を開けて帰ってきた。
「ただいま」
淡々として感情のない声でありきたりな言葉を言うと、奥からいるはずのない人間の声がした。
「おかえり~紗夜」
居間に向かうとそこには、当たり前のように居間のちゃぶ台の前に座った直の姿があった。
「……何でお前がここにいるんだ?」
「ん?暇だったから。昨日メールしたじゃん。明日暇~?って」
「あっそ」
少々荒々しく返事をすると居間に座る。
「直ちゃん2時頃来たのよ~」
「………」
2時頃?
直は確か、紗夜が出掛けるのを見ていたはず。
なのに何故紗夜がいない遠坂の家を訪れたのか、それが紗夜には気掛かりだった。
何も言わず直を見つめ続ける。
それを不思議そうに見つめ返す直。
少しの間だそれを続けていたが、段々アホらしく感じ紗夜が先に視線を逸らせた。
そしてカバンを持って立ち上がり、居間を出て行った。
「紗夜~そろそろご飯だよ~」
階段を登り始めたら居間からさも当たり前のように直の声が聞こえた。
「カバン置きに行くだけだ馬鹿」
軽く居間にいる人物を見えないながらに一瞥して部屋へと足を進めていった。
しばらくしてから服を部屋着に着替えた紗夜が居間へと降りてきた。
「あ、紗夜。ちょっと手伝ってぇ。今日は直ちゃんご飯食べていくからって多く作りすぎちゃって」
居間に顔を出すと台所から両手におかずを持って現れた母親に無理やり台所へ連行された。
「すみません、紗夜のお母さん」
「いいのよ~。小さい頃はよくやってたんだもの、今更よ」
「ありがとうございます~。じゃあ俺、お兄さんたち呼んできますね」
「おねが~い」
直が居間を出て階段を登っていく音を聞きながら、何故うちの母親と直は雰囲気が似ているのだろうと思いながら居間におかずやご飯を運んでいく。
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