3.君の隣

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夕飯を食べ終わり、片付けを手伝っている紗夜をよそに直は紗夜の兄と理化学について話していた。 「兄さん。お風呂沸きました」 布巾を持って居間に戻り、兄に向かってそう言うと、兄は「ああ」と答えて直に手を振って部屋へ戻って行った。 「……紗夜お兄さんと仲悪い?」 兄が出ていくのに見向きもせず無言のまま机を拭く紗夜にそんな言葉をかけた。 「そんなんじゃない。ただあんまり話さなくなっただけ」 「仲良くはないじゃん」 「仲悪くもない」 「ふ~ん」 そのまま机を拭く紗夜を見続けた。 「何?」 「何でもないで~す」 一度直を睨んだが、ため息をついてから台所に戻って言った。 「紗夜~」 台所で皿洗いや食器をしまっていた紗夜を居間でグタッとしている直が呼んだ。 「何だよ」 眉をひそめ明らかに嫌そうな顔をして居間に入ってくる。 「お前いい加減帰れ」 畳に座りながら直へ呆れた視線を向ける。 「いいじゃん。今日は遊べなかったし」 向けられた視線など気にせず笑う直。 「夏休みが長いのも考え物だな」 「何で~?」 「こういう馬鹿がうちに寄生するから」 「俺虫じゃないし」 「一緒だ」 「……ねぇ、紗夜」 「ん?」 少しの間が気になって直へ再び視線を向ける。 「何か懐かしいね」 「は?」 「いや、去年の夏みたいだからさ」 「あっそ」 「うんそう」 笑って紗夜の隣に座り直す。 その様子を見ながらため息をもう一度つき、苦笑いを返す。 空は雲一つない爽やかな夜。 久しぶりに夜遅くまで2人は話していた。 それは一年前のように自然で違和感のないものだった。
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