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元々紗夜は文系、直は理数系。理系の大学に行った直の課題を紗夜が手伝えるわけがない。
それよりも直自身、かなり頭が悪いわけではない。
確かに高校時代は補習を受けたり赤点を取ったりして紗夜に何度か勉強をみてもらったが、今では指定校の望み通りの大学に受かり、通っている。
「何でお前なんかが指定校とれたんだろ」
「紗夜、それどういう意味?」
「そのままの意味だよ。去年までの私は、自身の勉強をするよりお前に勉強教えてる方が多かった気がするぞ」
「……そ、それは……。いいじゃん。紗夜はセンター試験受かったんだから」
そう。紗夜は高校時代は常に学年上位に入るほど成績優秀であった。
そしてセンター試験で地元の国公立の大学に受かり今通っている。
「いい加減私から離れないと彼女できないぞ」
「彼女?」
「いらないのか?高校のときお前の周りの男子は騒いでただろ?」
「……あんまり考えたことないなぁ。紗夜は?彼氏いらないの?」
「別に。必要ないし」
「ふ~ん。………」
それから二人はなんの会話もなく時を過ごしていった。
部屋に聞こえるのは扇風機の機械音と直が鳴らすシャーペンの音。
しばらくして、テーブルの上に置いた紗夜の携帯が鳴った。
「っ!?びっくりした~」
「悪い。誰だ?こんな変な時間に」
ディスプレイを見ると『17:49』と表示されている。
「電話?」
「メール」
簡単な受け答えをしながら携帯を開いて中身を確認する。
「誰だこいつ?」
表示されたアドレスは見覚えのないものだった。
「知らない人?」
「ああ。とりあえず聞いてみるか」
そう言ってメールを返す。
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