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ガチャンッ
そんな音が窓から中へ入ってきた。
時計を見ると8時過ぎ。
あやふやな意識の中で起きていた紗夜は意識を覚醒させた。
ベットに寝たまま傍らにある窓から空を眺める。
「直が行ったか……」
誰に言うでもなく呟いた。
しばらく天井を見上げながら静かに呼吸を繰り返す。
昨日、直に言ったように今日は特に予定がない。
暇を持て余した紗夜にとって時間は有限であり無限だ。
時間があろうがなかろうが、紗夜には大した問題ではないのだから。
「ハァ……」
息を吐き出し、ゆっくりと状態を起こす。
気だるい体を無理やり従わせて立ち上がる。
枕元の携帯を手に部屋を出て台所へと向かう。
階段を下りながら母親の仕事に行くという声が聞こえ、玄関が閉まった音がした。
台所へ行くとテーブルには朝食がしっかりと用意されており、ご飯と味噌汁を自身でよそい、椅子に腰を下ろす。
特にテレビを付けるわけでもなく、ただ扇風機の音が空間に響く。
いつものようにゆっくりと食事をとり、食べ終えた食器を洗い、居間へと移動する。
木造建てで殆どの部屋が畳である紗夜の家は武家屋敷のような趣で歴史がある。
紗夜が生まれてから古い畳をはがしフローリングにした部屋もあるが、紗夜自身は和ものが好きで、本人の希望で自分の部屋は畳の部屋にしてもらっているくらいだ。
机の傍らに寝転がり、団扇を手に天井を見る。
机の上には課題図書。
縁側に吊された風鈴が涼やかな音を鳴らしす。
うるさい声が聞こえない……と思いながら綺麗に整われた庭へ視線を移す。
いつも玄関が開かないとここへ回ってくる直。
お互いが違う大学に通うようになってから直はあまり顔を出さなくなった。
紗夜とは違い隣の県にある大学に2時間近くかけて通っている直がそう簡単に紗夜の家に顔を出せるはずがない。
そして直は友達付き合いがよく、友達も多い。
講義が終わったからと言ってすぐに帰って来るわけもない。
そんなこんなで紗夜と直は夏休みに入るまでめったに会うことはなかった。
しかし夏休みに入って、直はしょっちゅう紗夜の家に顔を出しているが。
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