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ぼーっと畳の上で横たわっていた紗夜の耳にインターホンの音が届いた。
「……誰?」
気だるそうに体を起こして立ち上がる。
外からは聞き覚えのある声が聞こえてきた。
玄関のドアを開けると、そこには予想通りの人物が立っていた。
「直のお母さん。どうしたんですか?」
「紗夜ちゃん。お願いがあるの」
そこに立っていたの先程まで考えた直の母親。
「直ってば今日必要だからって台所のテーブルに置いておいた資料を忘れていったみたいなの。私これから剛(ツヨシ)の学校に行かなくちゃ行けなくて、直に連絡でも入れて取りに来さしてくれる?」
「………」
相変わらずの間抜けっぷりに肩の力が抜けた。
「ダメかしら?紗夜ちゃん」
「いえ。私が届けに行きますよ」
「え?でも結構お金かかっちゃうわよ?」
「いいですよ。普段からそんな遠くまで出歩かないんです。たまには遠出もしないと」
「そういえば紗夜ちゃんは近くの公立だもね。直もそこに行ってくれればよかったのに」
「直がですか?」
「フフッ。直の頭じゃ無理よね。じゃあお願いしてもいい?」
「ええ」
「じゃあこれ。お願いね」
直の母親は茶色いA4の封筒を渡した。
「はい」
「ごめんね。ありがとう」
そう言って直の母親は帰って行った。
紗夜は部屋に戻り身支度を整え、直の資料を持って家を出て行く。
家を出てすぐに直にメールをする。
只今時刻は10時29分。
直の大学に到着するのは12時を過ぎてしまうだろうと思いながら駅まで歩く。
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