1998年3月31日

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昼間はもう暑いのに、一度日が沈めば布団が恋しくなるような季節。頭まですっぽりと布団を被り、充電中だった俺を、すきま風と朝日がたたき起こした。嫌々ながら這いだし、洗面所へ向かう。 「おはよう…」 半開きの目と逆立つ髪、よれたパジャマがだらしない俺を作っている。歯ブラシを手に取り、歯磨き粉を付けようとした瞬間、安眠妨害の代名詞が、三本の針を自慢げに回しながらけたたましい音を立てた。慌ててボタンを押し、黙らせる。 「はてさて、今日の運勢は…」 規則正しい動きで歯を磨きながら空いた手でチャンネルを変える。目の焦点が合わないある種不気味なキャラが、【今日の運勢】を高らかに読み上げていた。 「今日のあなたは、人生が変わるほどの出会いがあるよ~」 占いを信じてるわけじゃない。運勢が良いと気分がのってくる、ただそれだけ。実際、今まで当たった試しがないのだから。でも何故か、その日だけは現実味を帯びていると感じた。 「出会いねぇ~。どうせならかわいい子がいいな。」 画面に背を向け、口をすすぐ。顔を洗い、頭を落ち着かせてからトーストをオーブンに放り込んだときだった。
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