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今度の件を冬海に話すと
「いつものことね。私は応援するだけよ」
と、いってくれた。もう夫婦みたいなもんだ。
僕と冬美は半同棲。今、彼女はイタリアの食品や雑貨の輸入会社に勤めている。本場のエスプレッソを本場のマシーン、豆で出したコーヒーはたまらない。ちなみに水もヨーロッパ特有の固めのミネラルがちがちでなきゃダメだ。そして付け合わせのチョコレート。こいつがやたらと甘い。甘さのハバネロって感じ。ただこいつが濃厚なエスプレッソに抜群に合う。こいつらは夫婦だね。ふたつでひとつ。日本じゃあまり馴染みはないが、イタリアじゃエスプレッソを頼むとカップの横にこのチョコが添えてある。朝、スタンディングのカフェには会社に向かう途中の男女が、チョコをポンと口に入れエスプレッソをぐいっとやって、会社に向かう。日本でいうと立ち食いそば屋みたいな感じか?
まぁ、この辺の知識は冬海から吹き込まれたことだが、世の中知らないことを識るというのは非常に楽しい。世界がその前と後では変わっているのだ。僕らの朝は一杯のエスプレッソとチョコではじまるようになった。これがないと何か調子が出ないほど。ちなみにエスプレッソを入れるのは僕だ。どうもはまりやすい性格のようで、マシーンを使うのが面白くてたまらない。冬海にはいつも「子供ね」と笑われるが、面白いものは面白い。
よくよく考えると今回の件は面白そうなんだ。ワクワクするんだ。違う世界を識った後の世界がどう変わって行くのか?それが楽しみでたまらないのだ。
…このときはまだ、その今までと違う世界があんなにも、自分さへ変えてしまうほど大変なことになるなんて、考えてもいなかった
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