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私には五歳上の姉がいる。
名前はハルちゃん。
ハルちゃんは車いす生活。
ハルちゃんが車椅子に乗り出したのは私が生まれる前、ハルちゃんが三歳の時かららしい。
それから18年間ずっとハルちゃんは車椅子生活。
ハルちゃんは甘くて冷たくて柔らかいものが好き。
プリンとかゼリーとかヨーグルトとか、甘くて冷たくて柔らかいもの。
果物も大好きでお母さんが珍しく買ってきた桃の缶詰も一人で全部食べてしまう。
私も桃の缶詰は食べたいけど、お母さんはハルちゃんにと買ってくるので私は食べれない。
お母さんはめったに物を買ってくれない。
お母さんが言うには家はお父さんの残したシャッキンが沢山あるから欲しいものは何も買えないらしい。
あまりしつこく聞くとお母さんは怖い顔で私をぶつ。
だから私は聞けないけど、お父さんの残したシャッキンはとても大きいらしい。
それに加えハルちゃんの病院代と私の高校の授業料があるからお母さんはいつも働いている。
ハルちゃんのお散歩は私の仕事。
学校が終わってみんな部活とかカラオケとかしていても私は真っ直ぐ家に帰ってハルちゃんを散歩につれて行かないとならない。
ハルちゃんは散歩が大好きで散歩の間はずっとニコニコしている。
涎だらけの手で色んなものを指差し、あ~う~と叫ぶ。
私はハルちゃんとの散歩はとても嫌い。
ハルちゃんの車椅子を押していると街行く人が珍しそうに見るから。
お姉さんの面倒をみて偉いね、と声を掛けてくるおばさんも大嫌い。
だから学校の帰り道はいつも憂鬱になる。
けれど、これが私の仕事なので毎日我慢している。
でも昨日の事。
私は初めてハルちゃんを置きざりにして逃げた。
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