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昨日もハルちゃんとの散歩はいつもの通り憂鬱に始まり憂鬱に終わるはずだった。
けれど、散歩の途中にクラスメートの出口君に会ってしまった。
私は急にハルちゃんと一緒にいるのが恥ずかしくなって、ハルちゃんを置いて走って逃げた。
ハルちゃんのあ~う~という叫び声が後ろの方で聞こえていたけど、私は走って
逃げた。
何だかハルちゃんの叫び声が途中笑い声に変わった気がした。
あ~う~あ~う~あはははは。
あ~う~あ~う~あはははは。
けれど、私は振り返らずに走って逃げた。
しばらく走って逃げた後、横並ぶショーウィンドウに映る私の顔が見えた。
私は笑っていた。
口の端を微かに上げて、嬉しそうに目を細めて。
その日の事はそれから先は覚えていないけど、クラスメートの出口君がハルちゃんを家まで連れて帰ってくれたらしい。
お母さんはハルちゃんを置き去りにして逃げた事をもの凄く怒った。
恥さらし、薄情者、人でなし。
お母さんは大きな声で私を罵倒した。
ハルちゃんは大きな声のお母さんに驚いて泣いていた。
あ~う~ギャ~、あ~う~ギャ~って。
でも、お母さんに叩かれている最中、私はハルちゃんを置き去りにしたことより
出口君にボロ家を見られたことの方がずっと嫌だった。
明日学校行きたくないな、お母さんに叩かれながらずっと考えていた。
ハルちゃんのあ~う~ギャ~という悲鳴が頭にキンキンと響いた。
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