ハルちゃん

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翌日、嫌々学校に行くと出口君は休んでいた。 ハルちゃんを私の家まで送ってくれたあの後、帰り道で轢き逃げにあったらしい。 幸いに命に別状はないけど両足と右手を骨折して、病院のベッドで寝たきり状態と先生が言っていた。 先生は轢き逃げは悪いことだが道路をわたる時は特に注意してわたるようにと皆に言い聞かせた。 私は何だか轢き逃げ犯より注意せずに道路をわたった出口君の方が悪く言われているみたいな気がした。 でも一方で今回の轢き逃げで出口君がうちのボロ屋の事を忘れてくれたらいいなとも考えていた。 轢き逃げの犯人なんて早く捕まれば良いのにと思うが、きっと捕まらないと思う。 お母さんとか先生とか大人の人は悪いことをしたら罰が当たると言うけど私はそれが嘘だと知っている。 罰は悪いことをした人に当たるのではなく、運の悪い人に当たるのだ。 例えば出口君のように。 ハルちゃんをわざわざ送ってくれたのに轢き逃げに会うなんて出口君は本当に運が悪いと思う。 そんな事より今日も帰ったらハルちゃんとの散歩が待っている。 ハルちゃんは私が散歩が嫌いなのを知っているはずなのに、私が帰るとあ~う~あ~う~声を挙げて喜ぶ。 本当に嫌だ。 本当に帰りたくない。 昨日出口君に出会ってしまったことは轢き逃げのお陰で幸い解決出来たけど、今日また他の人に出会ったらどうしよう。 また私はきっとハルちゃんを置き去りにして逃げるだろうし、きっとお母さんはもの凄く怒るんだろう。 本当に帰りたくない。 そうだ、出口君のお見舞いに行ったからハルちゃんの散歩は行けなかったことにしよう。 出口君は親切にもハルちゃんを送ってくれたせいで轢き逃げにあったのだ。 お見舞いに行くと言えばきっとお母さんも納得するに違いない。
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