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名案が浮かんで足が急に軽くなり、弾むような足取りで交差点に差し掛かる。
キキキキキー!!
キュルルルルー!!
ガツン!!
一瞬世界が真っ白になり、次の瞬間に目まぐるしい勢いで視界が逆さまになった。
ギャ~!!
知らないおばさんの悲鳴が聞こえる。
使い古された安っぽい表現を使うと、まるで映画のワンシーンのように、私の体はゆっくり宙に舞っていた。
逆さまの世界。
宙に舞いながら私は考えた。
地面に激突するまでもう少しだ。
そう言えば今日先生が交差点は注意するように言っていた。
出口君のこと運が悪いと言ったけど私も結構なものだ。
これで堂々とハルちゃんの散歩行かなくて良くなったかな。
それにしても地面になかなかたどり着かないな。
あ、もしかしたらこれは夢なんじゃないかな。
きっとそうだ。
あ~う~あ~う~あはははは。
あ~う~あ~う~あはははは。
ハルちゃんの笑い声が聞こえる。
いつも私の睡眠を邪魔する耳障りな笑い声。
毎朝この声で目が覚める。
あ~う~あ~う~あはははは。
あ~う~あ~う~あはははは。
私がこんな所で、轢き逃げなんかで死ぬはずがない。
もうすぐ目覚めに。
私がこんな所で・・・
あ~う~あ~う~あはははは。
あはははは。
あはははははははははははは。
ハルちゃんの笑い声は次第に大きくなる。
あ~う~あ~う~あはははは。あはははは。あはははははははははははは。
あはははははははははははははははははははははははは。
あ~う~。
グシャ!!
何か柔らかいものが潰れる音が聞こえた。
あ~う~あ~う~あははは。
あ、ハルちゃん・・・
完
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