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「…………」
切れる息、霞む視界、重い身体。
それでも少年は片手に持つ剣を敵から逸らさない。
「――――ッ!」
もう半場やけくそだった。
もうこの身体ではこいつに勝つことは不可能なのかもしれない。
それでも自分が諦めることを少年は許さない。
剣と剣。金属と金属がぶつかり合う音。
相手の武器は大剣。
その大きさ故に両手が塞がっている。
抑えられはしたが、これなら相手も動けない。
だが、その考えは甘かった。
少年の視界は一転して地へと落ちる。
何が起こったのか。その問いの答えは簡単だった。
両手が使えない相手は足を使ったのだ。
つまり、少年は単純な足払いを食らったのである。
普段ならそれなりの対処が出来ただろうがそんな余裕がない少年はその技の名前の通り、足を払われ、受け身をとることも出来なかった。
溜まりに溜まった疲労と衝撃が組み合わさって、意識が飛びそうになるがなんとか留めることはできた。
しかし、安心など出来る状況に彼はいない。
上空を見れば、相手が大剣を振り下ろそうとしているところであった。
「――――ッ!」
まさに間一髪。
振り下ろされた剣を少年は横に転がることでなんとか避けきる。
そんな咄嗟の行動が出来た自分に驚きつつ、ふらふらになりながらも立ち上がり、少年は相手を睨む。
振り下ろした大剣の先の地面は深くえぐれていた。
考える。
思考する。
考察する。
自らの脳をフル回転させてこの場を乗り切るすべを、相手を倒す方法を。
しかし、出て来るのは『負け』の二文字のみ。
少年は笑う。
つまり、考えるだけ無駄ということ。
思い返せばさきほどもやけになって考えなしに飛び掛かったばかりではないか。
無駄。
無理。
無謀。
それが終着点。それが全て。
集中は切れ、全身の力が抜けていく。
少年はまだ自分が立っていることだけがただ不思議だった。
少年は握っていた片手剣を手放し、遂には目を閉じる。
ゆっくり近付く足音。
恐怖感がないと言えば嘘になるが、そんなこともうどうでもよかった。
そして重い衝撃と共に、少年の――意識は――――途絶えた――――。
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