01.【天国と地獄は紙一重】

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そしてそれに近付く少女。プレイヤーネームは『カグラ』。 檀上には機械仕掛けの座れば全身が埋まってしまうような椅子。遠くからでも戦いの様子が解る巨大なディスプレイが三台。 そして少年『アンサー』と少女『カグラ』。 この二人以外に人はいない。 「……なんか用?」 少年は顔を向けずに言う。 「あ、いえ。いつまでも動かずになにをしてるのかなぁ、と思って。それと名前。よかったら名前を教えてくれませんか? プレイヤーネームではなくて実際の。因みに私は朝神神楽【アサガミカグラ】と言います!」 どうやら彼女……神楽は自分の本名をそのままプレイヤーネームにしたようだ。 ゲームの上で実際に戦い、動くのは自分なので、名前をそのままプレイヤーネームにするプレイヤーは少なくない。 少年はその例外の一人であった。 「あんまり言いたくないんだけど……。君の名前も聞いちゃったし、まぁいいか。俺は新田解斗【ニッタカイト】」 「新田解斗……解斗、解。ああ、それでアンサーですか」 解斗は名乗ったことを後悔した。 彼は最初、カイトで登録しようとしたのだ。 しかし、そんな彼に立ち塞がった壁。 『重複チェック』 つまり、カイトと言うプレイヤーは既にいたのだ。 それで解斗は『解』、つまり答えと言う意味を持つ『アンサー』をプレイヤーネームにしたのである。 その場で即席に作った名前。ゲーム開始当初では少なからず違和感を持っていたが、今では結構気に入っている名前だった。 しかし、名前の由来を他人に当てられるのはやはり、かなり恥ずかしい。 しかも解斗は名前を打ち明けて、何回か笑われた経験もある。 それならいっそ全然関係ないプレイヤーネームにすればよかったと幾度となく自分を責めたわけだが、一度決めたプレイヤーネームは変えられない。 つまり手遅れだったのだ。 そんな過去を思い出しつつ、解斗は問う。 「笑わないのか?」 「……へ? 何でですか? 私は良い名前だと思いますよ。『アンサー』も『解斗』も」 彼女は何を言ってるのか本当に分からない。というような表情をして答える。 そして、言い終えると同時に神楽は無邪気に微笑んだ。 その動作に少年は後ずさる。
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