116人が本棚に入れています
本棚に追加
≪もう体調は大丈夫なのか?≫
心配そうな声でそいつは言った。
「大丈夫だよ」
≪秋森が大袈裟に話していたから心配してたぜ?≫
「アイツのことは無視すればいいのに…元気」
≪なら良かった。あ、お前知らないと思うけどさ、A組にいるアイツいるじゃん?≫
A組?
「誰?」
≪オタクだよ≫
「あぁ」
その単語だけで分かっちゃう俺は改めて朝川のオタクで有名なことを知る。
≪めっちゃ変わったぞ?≫
「染めて、髪おろしてるだろ?」
≪なんで知ってんの!?≫
「いや、隣にいるし」
≪は?≫
クラスメイトの奴が間抜けな声を上げると側にいた朝川がすかさず反応をした。
「なになに?私の噂?」
「別に」
俺はただそう言うと携帯を黙って閉じた。
「ほら、クシャミしなかっただろ?」
「でもクシャミしてないからと言って噂していないと断言できないでしょ?」
「できる」
「その根拠は?」
「ない」
「なにそれ;」
朝川は呆れた表情で己の髪を書き上げながら俺を見た。
「んじゃ、反対に言わせてもらうがお前がオタクだからと言ってみんなもオタクじゃない」
「そんなの当たり前じゃない」
「分かってるならどーしてお前の好きなモノをみんなに押し付ける」
「押し付けてないよ。ただみんなにアニメの素晴らしさを教えたいだけなんだよ」
「そ・れ・が!押し付けているんだよ」
「別にオタクになってほしい訳じゃないし、私の考えを理解してもらいたいと思っている訳じゃないよ」
珍しく…そう。まるで今日の快のように朝川は真剣な眼差しを俺に差しながら言った。
「否定だけはしないでほしい」
「はぁ?」
「だって、みんなドラゴ○ボールとかドラ○もんとかは好きだっていうじゃない?」
「そうだな」
それは日本が誇れるアニメだと言える。
「なのに、少しマイナーな漫画やアニメの話をするだけで気持ち悪いとか、どこが面白いの?とか…侮辱だけはしてほしくないな~」
気がつくと朝川の目に涙が溜まっていたのに気づいたが俺はあえてそれに触れず、黙って彼女を見つめる。
「お願いだから…私を否定しないでよ……別に理解してもらわなくてもいいから……」
いつもアニメや漫画のばかり話をするからそのギャップのせいか朝川が初めて普通の女の子に見えた。
「………」
.
最初のコメントを投稿しよう!