部活

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テニスコートにはすでに同級生が7人、後輩が20人いて、コートの整備に励んでいた。 やがて部長が指示を出し、ストレッチが始まる。 すると、竹下と松本が僕を挟み、ストレッチを始めた。 どうせまたちょっかいを出すのだろう、と思っていると、案の定つつく、たたく、蹴るなどのちょっかいを出してくる。 やっぱり、精神的に子供なんだな……放っとけば飽きるだろう…… 暫く無視をしていたが、やがて松本がしびれを切らしたのか突然声を荒げた。 「おい! こんなに殴られてくやしくないのかよ! 男なら殴り返せよ!」 「……別に……」 「はぁ!? 何が『別に』だ! 本当にお前は弱虫だなぁ」 ……違うよ。どうせ反撃したってそれをいいことにまた殴ってくるだけだし、殴ること事態怪我をさせると後が面倒なだけさ。 それに、殴り返す事が弱虫じゃないって証拠なのか? はぁ……こんな自分を見て後輩はどう思ってるのかなぁ……。さぞ格好悪い先輩に見えてるだろうなぁ。 目の前では竹下と松本が挑発の言葉を並べていたが、もはや僕は聞いていなかった。 もう頭の中ではどうすればこの状況を打破できるかで一杯だったが……結局無視するしかなさそうだだな。 「おい、聞いてるのか!?」 「ん、あぁ……聞いてるよ」 「ん、あぁ……聞いてるよ」 松本が僕の言った言葉を真似して竹下と笑い転げている。 しかし、本当によくもまぁ人の感情を逆撫でするような行動が次から次へと思い付くものだ。 さて……どうしたものか…… と、不意に車のドアが閉まった音が聞こえた。 その音を聞いた部員は一瞬固まる。 なぜならその音は中島さんというコーチが来たという証拠だからだ。 中島さんは現役時代に全国大会に出場したという偉大なOBで、僕たちの面倒を見て下さっている有り難いお方だ。 ただ、練習や言動に厳しいものが多い。 いわゆる鬼コーチだ。 だから部員は震えあがった訳だが、僕にとっては中島さんは大歓迎だ。 なぜなら中島さんは曲がったことが大嫌いで、竹下と松本は中島さんがいる間は大人しくなる傾向があるからだ。 現に竹下と松本は僕に一瞥をくれて離れていく。 確かに中島さんの練習や言動はキツい部分があるけれど、それは僕たちを思ってのこと。 愛情の固まりなのだ。 だから僕は中島さんは大好きだ。 心から尊敬できる偉大な存在だ。 そして今日も中島さんの地獄の特訓をこなすのであった。
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