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「ただいまー」 夕方は7時を回ったころ、僕は家路についた。 ただいまとは言ったものの、家の中からは返事はない。 僕は今は四人家族だが、両親は共働きで、姉は大抵の場合寝ている。 でも、両親は夜中まで働いている訳ではないので少したてば帰って来る。 それまではTVのニュースを見るのが日課だった。 TVをつければまたいつものアナウンサーが無表情で淡々とニュースを読み上げる。 なんとも人間味がなくて、このテレビ局のニュース番組は好きではなかったけど、この時間帯ではこのテレビ局しかこれといって見る番組が無いので、毎日このニュースを見ていた。 そのアナウンサーは、最近全国で自殺が頻発していることを告げた。 でもそのニュースが読み終えれば『次です』と言って何の名残も残さない。 感想も言わない。 ……これだからこのニュース番組は嫌いなんだ。 僕はアナウンサーの視線から逃れるようにTVを消すと、ちょうど母さんが帰ってきた。 「ただいまー」 「おかえりー」 僕は玄関まで迎えに行くと、今日の晩御飯の食材を両手に抱えた母さんの姿があった。 僕は母さんから袋を受け取り、キッチンに持って行こうとすると、母さんは僕を呼び止めた。 「ねぇ、お姉ちゃんは起きてる?」 「ううん、今日もまた寝てるよ」 「そうかぁ……困ったよね……」 母さんは心底困った表情を浮かべている。 姉ちゃんは最近に始まったことではないが、昼夜が逆転した生活を送っている場合が多い。 これには過去のトラブルによるものだ。 先に、今は四人家族だと言ったけど、以前は祖母も一緒に暮らしていた。 ただ、祖母に痴呆が発症し、その事が母さんや姉ちゃんとトラブルになったため、現在祖母は老人ホームで生活を送っている。 このトラブルと、さらに学校での人間関係のトラブルが上乗せされて悩んだ姉ちゃんは、一番色濃く疵が残っていて、なかなか治らない姉ちゃんに、母さんが半ば呆れてしまっているのではないかと、僕は心配だ。 「まぁ、とりあえず遅くなるからご飯を作ろうか」 「うん」 母さんと僕はご飯を作りにキッチンへ向かった。
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