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「わかったよ。行くか…」
気だるい声を発しながら私は淀のもとへと向かう。
既に彼は登頂しているらしく、それがまた一層気だるさを増した。
私は2時間かけて登頂した。
まったく、こんなだだっ広い山に死体を捨てるなんてご苦労としか言い様がない。
頂上に着くと淀がすでに所定の作業を終えていた。
「今さら着いたか、もう終わっとるぞ」
「やれやれ、だったら私がここまで来た意味はあったのかな?」
息を切らしながら皮肉を漏らす。
「で、何かわかったかい?」
「ずいぶんな嫌みだな。こんな細切れの体をどう見ろっていうんだ」
淀がひょいと持ち上げたのは肉片だった。どの部分かは全くわからない。5cm四方ほどのただの肉塊になっている。
「すまない。ただもしこれで何かわかっていたら本当にアンタは化物だと思ってね」
愛想笑いで何とかつくろう。
「だが死因はわかったぞ」
さらっと言ったその一言にチーム全員が彼を見た。
「ほ、本当か…?どうやって…?」
しどろもどろになっている私にまた肉片を持ち上げ、
「ここに搾状痕がある。皮膚の組織から見て首の部分だ。絞殺だよ」
…やはり化物だ。
「さて、これからラボで本格的に検死するかの」
肉片を揚々と死体袋に詰める様は鳥肌が立つほど不気味だった。
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