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頭の中で、警報がなっている。
言っていい事と、悪い事がある。
でも、溢れ出してしまった感情は他に流れていくところを知らない。
ユージを助けられなかった悔しさ。そこにいるのに触れられないもどかしさ。一緒にいたい切なさ。お姉ちゃんへの言葉にならない渦巻く感情。
その全てが、不必要な悪意となってお姉ちゃんへ向かって吐き出されていく。
「お姉ちゃんに会いに行かなかったら、ユージはこんなことにならなかったのに!」
自分の声が、上手く聞こえない。ただキンキンと、高い声が耳に届く。
「お姉ちゃんのせいじゃん!」
『チサ!』
放っておけばいつまでも叫んでいそうな私を諌めたのは、ユージで。
私にしか聞こえないその声に、ふとわれに返ってお姉ちゃんを見ると、少しうつむいて下唇を噛んでいた。
噛みすぎて白くなってしまったその唇の、歯の当たったところだけが異常に赤い。
震える両の手のひらは、爪が食い込んでしまうんじゃないかというほど、きつく握り締められていた。
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