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一人にしないで欲しい。
遠くへ行くなら、私も一緒に連れて行って。
――どれだけそうしていたのか、もうわからない。
早く戻らなければと頭ではわかっていても、もう指一本自分の意思では動かせないくらい、心が弱っている。
ときどき外の廊下をひたひたと歩く足音が響くの聞いていると、そこに騒がしい足音と、声が聞こえた。
「チサさんっ! どこですかっ」
聞き覚えのある声と、自分の名前に気づいて、よくやく顔をあげる。
ユージの、お母さん?
気力を振り絞って立ち上がって、外へ出ればちょうどそこに真っ青な顔をしてユージのお母さんがいた。
「ここにいたんですね……っ」
震える声は、それだけで異常があったことを私に教えてくれる。
「ユージの容態が、急変しましたっ」
頭が、殴られたように痛い。
壁にかかった時計は、9時45分をしめしていた。
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