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私は、そっとお姉ちゃんに近づいた。
「お姉ちゃん」
と声をかけると、ゆっくり顔を上げる。
泣きはらしてボロボロの顔は、まるで鏡を見ているよう。
「私が、家出したとき、ユージが会いに来た?」
心の中で欠けていたピースが、少しずつ埋まっていく。
「……来たわ。チサを返してって泣く私に、ユージくんは土下座して、妹を任せてくれって言ったの」
ただ知らなかった。それだけのことだった。
「そうじゃなかったら、私があなたを放っておくはずないでしょう。あなたがユージくんの所にいるって知ってたから」
私を包んでいる深い愛情に、気づかなかった。
お姉ちゃんも、ユージも。
私の気づかないところで、こんなにも深い愛情をくれていたのに。
「……昨日、ユージと会って、お姉ちゃん何を話したの?」
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