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そんなことを話してる場合じゃない。
だけど、いま聞かなければいけない事だと思った。
ユージがまだ生きている、いま。
「ユージくんは……」
『チサ、聞くな。もういいからっ』
後ろから、ユージの諌める声が聞こえる。
けれど、取り合っている余裕はない。声を無視して、お姉ちゃんから目をそらさない。
「チサを下さいって、結婚したいんだって」
ああ。
心の中では驚きより、やっぱりという思いが勝っている。
お母さんの指輪。不自然なユージとお姉ちゃんの組み合わせ。
色んなことが、いま確かに噛み合っていく。
バカ、ユージのバカ。
肝心なこと、何も言わないで逝こうとして。
涙がこぼれる。ただ嬉しいわけじゃない。けれど悲しいだけでもない。
切ないという言葉は、きっとこういう思いの為にあるんだろう。
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