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「ありがとうございました」
お世話になった方々に丁寧にお礼を言って、病院を後にした。
まだ、少し日差しが痛い。それでも空からは入道雲が消え、秋を匂わせる日本晴れが広がっている。
少しばかり暑さを誤魔化してくれる緑道を選んで歩く。
――私たち、2人で。
「本っ当に、人騒がせなんだから!」
あれから、あの日から。
少し日が過ぎて、ようやく元気を取り戻した私が言えば、日の光の下でユージが笑った。
「悪かったって」
すっかり慣れた松葉杖を片手にするユージは、私の隣にいる。
ちゃんと、生きて。
「……まあでも、不思議な体験だったよな」
ユージが少し遠い目をしてそんなことを言ったので、つられて私も思い出してしまう。
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