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――あの時、ユージは確かに消えてしまった。
私の前から。
目の前が真っ暗になって、絶望を見た。
気が狂ってしまいそうになった瞬間、動き出したのだ。
ユージの、心臓が。
最初はわけがわからなくて、お医者さん達も驚いてた。
突然の容態の急変も、持ち直した理由も、説明がつかないと。
皆で顔を見合わせるなか、私だけが気づいていた。
届いたんだと。
私の「愛してる」が。
消えていったように見えたのは、きっとユージの魂があるべき姿に戻ったからじゃないだろうかと。
もちろん誰が答えをくれるわけじゃない。だけど、確信があった。
きっともう、ユージは大丈夫だって。
「もしかして本当は全部、夢じゃないかなって思った」
隣を歩くユージに言えば、空いている手で鼻の頭をかきながら低くうなった。
「オレも、そう思ってたんだけどな」
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